隠秘学の基本理念とは簡単に言えば決定論と自由意志を越えたものであるという事である。隠秘学に於いては存在するものは全て何らかの関連を持っているのである。従って偶然と云うものは有り得ない。それならば決定論となりそうであるがそうではない。全てのものは偶然でなく関連し合っているが、その関連性は常に無限の相に於けるものなのである。
例えばある人間が明日死ぬ事が決まっているとしよう。これは決定論である。しかしそれには条件があって、その人間がAと云う行動をとれば死ぬ事は無く、Bと云う行動を取れば死ぬとすれば、行動の選択は自由意志となる。しかしどちらかの行動に至る過程にはまた別の事象が影響し、決定を左右する。つまりそれぞれ全ての決定されている事象が、無限の連関の中で選択される。だが決定されている事象自体もそれが最小単位ではなく、さらに無限に分割され無限の連関を持っている。つまり自由意志による選択は無限の連関の結果による必然であるという事である。
レヴィによればそれは次のように表現される。「自然の中にあるものはなに一つとして無関係なものはなく、路上に小石が一つ多いか少ないかで、最高の偉人や最大の帝国の運命までもが挫かれたり大きく変えられたりすることがある」 。 |
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