外的現実は何だったのか?
家族が目撃した現象はオレンジ色の光までである。但し、娘のベッキーだけは母親であるベティの前にエイリアンが出現した時点まで目撃している。だがUFOに乗り込んでからの出来事は全てベティ単独の経験である。
だがアンドレアソン夫人個人の体験した現象も全て事実であると云う前提から考えなければならないであろう。勿論精神的な幻覚であると云う反論も成立しない事はないが、彼女が嘘を言っていないと云う事を認識するならば、幻覚ではなく少なくとも彼女の内的現実である。何故なら幻覚を内的現実と認識してしまう場合は現実検討能力に欠けると云う事になるが、彼女の場合には当てはまらないからである。従って問題となるのは、彼女の捉えた内的現実がそのままの形での外的現実であったのかと云う点である。
カリフォルニア州立大学教授のアルビン・ローソンなどは、オットー・ランクの提起した出生外傷の理論を援用して、この事例を出産外傷により形成された現実であると解釈しているが、アブダクション事例の説明としては全く的外れである。つまり、人間が催眠やLSDによって出生外傷に基づくと思える経験をすると云う事は当然有り得ることであり、それ自体は単なる心理学的事実でしかない。しかしたとえアブダクションケースで報告される現象がその様なものであったとしても、問題は催眠下でもLSD使用下でもない人間に対して、それを引き起こした外的現実とは一体何であったのかと云う事なのである。
従って考えられる可能性は、彼女の内的現実がそのままの形で外的現実であったか、あるいはその様な仮想現実を精神に植え付けられたのかの二つである。どちらであるかと云う判断は現時点では不可能であるが、いずれにしても人間ではない何らかの生命体(エイリアン
)の意志的行動
によって与えられた現実であると考えるべきであろう。勿論人間による悪戯・犯罪あるいは意図的な情報操作として、選ばれた人間にそういった内的現実体験を行っているとも考えられる。しかし、信憑性の高いとされているアブダクション事例では、第三者の目撃や物理的痕跡なども含めて判断されているのでその様な可能性は除外出来るであろう。
また心理学者ユングが提起したような、より広い意味での無意識を含めた人間の意識の産物である可能性も考えられるが、それも未知であると云う意味に於いてはエイリアンと仮定しても支障はない筈である。つまり心の内側か外側かと云うことが問題なのではなく、現実に人間に影響力を持つエイリアンが存在すると云うことが問題なのである。
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